あなたは希望そのものでした。

今日はオープン戦のチケット発売日だった。
レッドは引退試合もセレモニーも行わないらしい。

今日になってやっと、レッドのドキュメントを見た。
認めたくなくて、ずっと時間を止めてしまっていたけれど、もう今シーズンがいやおうなく始まってしまうんだ。


あの日、友人からの一報で私は引退を知った。
時を同じくして、他の人からもメールが。

最初は意味がわからなかった。でも2秒考えて、ああ頸椎か、と気付いた。
信じられない、を通り越して、思考回路は止まった。
どうしよう、どうしよう。どうしたらいい？
何故か妙に焦って、なにも手につかなかった。
その日は結局、家に帰ってもニュースや新聞はまったく見なかった。

翌日、夜に母がしみじみと、赤星が引退してまうね、と言った。
母はレッドが大好きだった。
そうやね、としか私は答えられなかった。
4日たって、やっと動く彼をテレビで見た。ようやく涙があふれてきた。

なんの覚悟も決まらないまま、ありがとうもさよならも言えずに。こんなのは嫌だ。
もう一度、あの小さな背中を見たい。ただそれだけなのに。

敬称が選手ではなく氏になり、母は「次は誰を応援しよかな。広大くらいしかおらんなぁ」なんて口にした。
チームを好きって、きっとそういうことだ。
一方で、私は時が止まったままで、周りは容赦なく進む。
いいんだ、それで。少なくとも私には必要だった。

ああ、レッドのいないタイガースがはじまる。